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My life with Tigers 

タイガースの戦いに一喜一憂しながら、
日々の生活は続いてゆく

リキ
陽だまりの中に、リキは横たわっていた。
リビングのガラス戸の向こう、コンクリートで固められた狭く質素な内庭、それがリキの世界。塀の隙間から差し込んだ朝の日差しが、リキの周りだけに降り注いでいた。その光景に、一瞬見とれてしまった。

「リキが死んじゃった・・・」
僕はその朝、半べそをかく母親に揺り起こされた。寝起きの悪い僕だが、すぐに状況を把握した。予感はあった。

前の晩、寝ているリキに毛布をかけてやると、いつもある反応がなかった。どんな深い眠りについていても、毛布をかけてやるとリキは起きて顔を上げる。ただ、その晩、リキは眠ったまま動こうともしなかった。不安になり、リキの体に触れると、かすかに顔を上げ、そのまま、再び眠りについた。

それが最後のリキとの時間。あまりに寂しい最後の時間。もう少し一緒に、後ほんの少しでも一緒にいれば良かった。今更、だけど。

リビングから見えるリキの姿は、まるで眠っているようだった。母親の勘違いだ、リキはただ眠っているだけ、そう思いながら、ゆっくりと庭に出た。ゆっくりと。
やっぱり、リキはそこにはいなかった。あるのはリキの肉体。頭をなでると、まだ温もりが感じられたが、リキの顔に表情はなかった。まるで剥製みたいだ。冬の寒い朝、リキの周りだけは、すごく暖かかった。

2週間ほど前から、リキの顔が急に老け込んでしまったように見えた。ただ、毎日散歩にも出かけるし、ご飯も沢山食べていた。それでも、何かが違った。ひどく寂しそうな感じがした。老いるという事はそういうものなのだろうかと思う一方で、違う思いもあった。

僕が実家に帰ってくると同時に、ロンも我が家の一員になった。体が弱く小さなロンは、いつの間にか我が家の主役になりつつあった。リキは嫉妬してないだろうか、愛情を奪われたと思ってないだろうか、その事がひどく気がかりだった。

リキ、ごめん。
息のないリキに何度も謝った。謝ることしか出来なかった。もっと愛してやれたのに、昔のように一緒に遊びたかったのに、一緒に日向ぼっこしたかったのに、結局できなかった。リキがそれを望んでいたかどうかなんて分からないけど、僕はそれをしてやれなかった事が申し訳なくてしょうがなかった。離れて暮らした十年間という月日を取り戻したかったのに。結局、あの頃のように心を通わす事は出来なかった。

実家に戻ってきた僕をどんな目で見てたんだろうか。昔とは変わっちゃったって思ったんだろうか。昔みたいにずっと一緒にはいられないし、自分のことで精一杯で、昔みたいにリキのことばっかり考えてられないし、ロンも心配だし。こんな突然、別れが訪れるとは思ってなかったし。こっそりと眠るように行ってしまうんだから。言い訳ばかりが出てきた。今更、言い訳して何になる、そう思いながらも、必死に弁明した。

もっともっと一緒にいれば良かった。
リキがいなくなって5日あまり、僕の生活は何も変わらない。何の変化もない。その事が、ひどく寂しく感じる。

リキは浜松のペット霊園で眠っている。必ず会いに行くから。


| 大好きな犬たち | 00:57 | comments(2) | trackbacks(0) |