甲子園
聖地。
日本で最初に登場した野球場。
5万人を収容する東洋一の規模を誇るマンモス球場。
阪神タイガースの本拠地、阪神甲子園球場。
球場外周を覆う蔦。
バックネット裏を覆う銀傘。
内野の黒土、外野の天然芝。
白地に縦じまのホームユニフォームを身にまとった、
タイガースの選手達。
テレビでいつも見ていた光景が、
目の前に圧倒的な迫力をもって広がっている。
4連休をとって、初めて足を踏み入れた聖地甲子園。
野球好きの友達の名言。
「野球ファンにとって球場という場所は、
女の子にとってのディズニーランドみたいなもんだ」
阪神梅田駅から甲子園駅まで車中で、
すでにドキドキドキドキ。
球場につき外周の蔦を見て、感動のあまり言葉を失う。
本拠地に首位中日を迎えた
夏休み最後の甲子園のスタンドは黄色一色。
僕らの席は、レフト外野席。
普通、球場でレフト外野席といえばビジター応援席。
でもこの球場は、レフト外野上段のほんの一角に作られたビジター応援席以外は、全て阪神応援団。
僕だって、
オーダーメイドで作ってもらった真弓のユニフォーム。
負けてないんだから。
凄まじい熱気。
いつもナゴヤドームで涼しく野球観戦している僕にとっては
熱気と暑さに耐えられるか心配だった。
でも、ライト側から涼しい風が吹き付けるので、結構快適。
ふと気づく。
これが浜風!
これが六甲おろしか!
南から北にかけて吹く浜風。
特にライト方向へ打球を飛ばす左打者にとってはこの風が強敵となる。一方で、レフト方向の打球はよく伸びる。
掛布が、バースが、
レフトへ流し打ってホームランを量産した、あの浜風だ!
後ろの席には
少年野球チームらしきの子供の集団が陣取っていた。
持参したお菓子を広げると、
後ろから手が伸びる。
お菓子を分け与え、知らないおじさんに物をもらってはいけないんだぞとたしなめる。
「知らんおっちゃんちゃうもん。だっておっちゃんも阪神ファンやろ?」
そうか、そういう場所なのか。
すでに僕らは他人ではないんだ。
僕らは阪神ファンという共同体なのだ。
一緒に観戦した中日ファンの友人は肩身狭くこっそりと
心の中で中日を応援していたにもかかわらず、
すっかり子供達に見抜かれ、
途中からジェット風船でガンガン殴られていた。
僕は友人を見捨てて、子供に肩車してやりながら、
阪神ファン同士の友情を深めた。
何となく関西というと、怖い人が多いというイメージがある。
甲子園の阪神ファンはちょっと怖いんじゃないかと、ビクビクしていた部分があった。
でもそれは違った。
今まで行った球場のどの阪神ファンよりもマナーがいい。
何というか、ファン同士の一体感というものが、
どこの球場よりも強い気がする。
大歓声の中、精一杯の力を振り絞るタイガースの選手達。
選手が甲子園のお立ち台でよく口にするセリフ。
「ファンの皆さんに力をもらった」
それは本当だった。
あの球場のもつ力、阪神ファンの力というものを体感した。
あの5万人の熱狂的な応援の中では、
手を抜いたプレーなど出来ない。
7回裏の攻撃の前に阪神ファンが一斉に放つジェット風船。
地響きするような大歓声。
内弁慶と言われるほど、
ホームグランドで強さを発揮するタイガース。
ここでやらなければ男じゃない、
選手にそう思わせる球場。
僕は3泊して、2試合観戦して現実に戻った。
夢のような時間。
そして、2日間だけでも甲子園の観客の一人として
タイガースの力になれた事が何より嬉しい。